第90回 新型コロナ禍で思う認知症の人の支援のあり方。
- 新型コロナウイルスの感染流行は、医療従事者にとどまらず、多くの業界に深刻な影響を与えております。未だ、感染予防対策の効果が見えない現状では、毎日報告される感染者の数に戦々恐々とさせられる今日この頃です。
そこで医療従事者ならびに介護従事者は、この事態の中、認知症の人の支援の在り方をもう一度考え直してみたいと思います。今回のコラムでは、昨年1年を振り返り、このコロナ禍における認知症の人の医療、介護支援のあり方について、私なりの考えを述べてみます。
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感染させない配慮
病院等の医療施設や介護施設内でのクラスター発生が毎日のように報告されていることから、医療・介護従事者がすべきことは、施設を利用する認知症の人やその家族に感染させない配慮です。今やすべての関連施設で、十分な感染予防対策がなされていると思いますが、それなのになぜ施設内クラスターが起こるのでしょうか。
最も考えられるのは、患者が持ち込むよりも、職員や家族、部外者からウイルスが感染してしまう事です。発熱や風邪症状などの体調不良を訴え受診した患者には、多くの医療機関で別室を用意し、一般の外来患者とは別に診察を行っています。また、診療時間を別に設けている医療機関もあります。このように感染を疑った患者さんと他の患者さんが接しない配慮を多くの医療機関で講じています。
受診に付き添う家族の体調もチェックしますが、自覚症状のない方に感染の有無をチェックするには限界があります。同様に、病院に出入りする関連業者にも注意を払いますが、いずれにしても各施設の職員や出入りする外部者からの感染を100%予防することは困難といえるでしょう。施設関係者はこのことを十分認識し、細心の注意を払うことが重要です。
医療、介護従事者自身が感染するリスクは大きいといえます。それぞれには、生活の営みがあり、また同居家族もいます。それゆえ、家庭内での感染機会が多いことを認識し、施設内にウイルスを持ち込まない対応が必須です。出勤前の体調チェックはもとより、同居家族の健康状態や濃厚接触者の有無のチェックも欠かせません。
全職員には、出勤時に健康チェックを実施し、体調不良を訴えた場合は休職とします。発熱症状を有する場合、あるいはPCR検査陽性者の家族と同居している場合、他の陽性患者と濃厚接触の機会があった場合は、PCR検査を実施し、決められた期間出勤停止とします。しかし、施設によっては、介護職員の不足から、感染を疑われた職員の休職処置を躊躇しがちですが、そこは厳格に対応することでリスクを最低限に抑えることが可能です。
認知症の人への支援
認知症の人の多くは、新型コロナ感染症COVID-19の知識はありません。それゆえ、マスクの着用や手洗いの必要性を理解していません。まずは、医療・介護従事者がマスクや手洗いの必要性を認知症の人にも理解できるように説明し、説得します。家族の説得ではそれらを拒んだ認知症の人も、医療・介護のプロの人だと、指示に従ってくれるようです。
コロナ禍では、三密を避ける意味で、地域が主催する様々なイベントが中止になり、またデイサービスも一時休業する施設も多いようです。それにより、認知症の人が社会活動に参加する機会が制限され、認知機能がさらに低下したケースも多いことが報道等で伝えられています。
私の臨床経験から思うに、認知症の人が今まで利用していたデイサービスには、可能な限り、参加を継続することをお勧めします。コロナ禍で感染の心配はありますが、一歩家の外に出れば、誰でも感染の機会はあります。家庭でも、他の家族からの感染の可能性はあります。マスクと手洗いを忘れず、またデイサービスの感染対策を十分確認した上で、参加させることを考えてみて下さい。
行きつけのデイサービスがコロナで閉鎖された場合は、その時間、家族が自宅で世話することが強いられます。そうなると、今までの生活様式が大きく変わり、介護への負担も増えます。そこで、ケアマネージャーは、できるだけ家族の負担を軽減するために、他のサービスを利用するプランを立てることに努めると良いでしょう。家族への介護負担軽減は、認知症の人への大きな支援となります。
家族の支援
コロナ禍での家族支援は、通常の介護支援に加えて、家族の感染に対する恐怖や精神的負担への支援が必要になります。デイサービスが利用できなくなったことや、訪問サービスが一時中断されたことなどで、家族が抱く精神的な負担感や不安感に対し、プロの介入が求められます。
デイサービスに似合う社会資源を提案できれば良いのですが、なかなか思うようなサービスは見当たりません。家庭環境やご本人の状態にもよりますが、ケアマネージャーは、家族自身がどのような支援を希望しているのか、よく話を聞くことです。場合によっては、ショートステイなどのお泊りのサービスを提案してみてはいかがでしょうか。
ただ、適切な支援が提供できなくても、家族にとっては、話を聞いてくれて、一緒に考えてくれるプロの介護者がそばにいるだけでも気分は違います。プロの介護者・支援者の家族に寄り添う姿勢は、家族介護者の活力になると期待しています。家族と一緒に世話の方法を考えることで、家族は安心することもあるようです。
ユッキー先生のアドバイス
2度目の緊急事態宣言が出され、COVID-19 の対策が逼迫しています。特に重症者の受け入れ病床の稼働率も100%に近い状態です。この状況では、同居の高齢者がCOVID-19 に発症した場合は、危機的な事態を招くことになります。
そこで、家族ができることは、まずは徹底した感染予防です。その上で、自宅にこもることによる認知機能低下も回避しなければなりません。その際に、家族が認識しておくことは、三密をさけ、外出時の最も基本的な感染予防であるマスク着用と手洗い、そして毎日朝と寝る前の健康チェックを欠かさず行う事です。
(2021年1月29日)
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