発症から診断まで:①認知症の基礎知識

この記事の目次
  1. 加齢によるもの忘れと、認知症によるもの忘れの違いとは?
  2. わが国の認知症高齢者の数は?
  3. 認知症の原因は?
  4. 若年性認知症とは?
  5. 回復する認知症もある?
  6. 健康食品やサプリメントなどの効果はあるか?
  7. 薬の影響で認知機能が低下する場合があるのか?
  8. 高血圧や糖尿病も認知症の危険因子になるか?

加齢によるもの忘れと、認知症によるもの忘れの違いとは?

加齢によるもの忘れは、出来事の一部を忘れても、体験そのものは覚えており、ヒントや記憶をたぐることで思い出します。また、忘れたという自覚があります。例えば、眼鏡をどこに置いたか忘れてしまい、自分の行動をたどることで思い出します。 一方、認知症の場合、体験そのものが記憶から抜け落ちます。ヒントがあっても思い出せないため、忘れたという自覚がありません。進行すると、判断力や理解力が低下し、日常生活に支障があります。

加齢による物忘れと、認知症による物忘れの違いとは?

わが国の認知症高齢者の数は?

認知症高齢者の数は2012年の時点で全国に約462万人となっており、さらに10年後の2025年の認知症患者は、約700万人と推計されています。

認知症患者は2025年に700万人を突破。65歳以上の5人に1人

認知症の原因は?

高齢者に起こる認知症は、加齢による脳の病的な老化の場合と、脳血管の障害によって起こる場合があります。

加齢による脳の病的な老化の場合は、アルツハイマー型レビー小体型などのように、異常な蛋白質の産生や蓄積により脳の細胞が死滅し、障害が起こります。

一方、脳血管の障害によって起こる場合は、脳の血管が詰まったり(脳梗塞)、脳の血管が出血すると、十分な酸素や栄養が送られないため、徐々に脳の機能が低下し、認知症や運動障害が起こります。

脳血管障害は生活習慣病が原因で引き起こされます。例えば、高血圧・脂質異常症・糖尿病などの予防を行う、禁煙する、食生活を見直す、日々の生活に運動を取り入れるなど生活習慣の改善を行うことが重要です。

種類別認知症の原因と症状

若年性認知症とは?

65歳未満で発症した場合、「若年性認知症」とされます。

本人や家族が仕事や家庭の中心的な存在であり、病気のために仕事に支障が生じたり、仕事をやめることになって経済的に困難な状況になる場合があります。

回復する認知症もある?

認知症は、軽度認知障害(MCI)の状態が続いた後に起こります。そのため、軽度認知障害(MCI)の段階で気づき、生活習慣の見直しをすることが大切です。

一方、頭部の病気が原因で認知症の症状がみられる場合があります。例えば、脳腫瘍・慢性硬膜下血腫・正常圧水頭症などの外科的な治療が必要となる病気、脳血管障害、甲状腺機能低下症や薬の影響によるせん妄状態などがあります。適切な治療を行うことで、症状が改善したり、回復する場合があります。

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健康食品やサプリメントなどの効果はあるか?

認知機能に関わる栄養成分が研究され、健康食品やサプリメントとして販売されています。しかし、ある特定の栄養成分が含まれているだけですので、栄養素を網羅することは難しいです。また、特定の栄養成分だけ摂りすぎてしまう恐れもあります。

まずは、日頃の食事を見直して、栄養バランスを考えた食生活に心がけましょう。例えば、野菜や海藻を意識して摂取する、外食をする際に、単品の丼にするのではなく、定食にすることで、いろいろな食材を摂ることができます。

また、健康食品やサプリメントを摂る際には、かかりつけ医や主治医に相談しましょう。

薬の影響で認知機能が低下する場合があるのか?

病気の治療に伴い、薬物療法を行っている場合もあると思います。しかし、薬の影響により認知機能が低下する場合があります。例えば、注意力が散漫になる、薬を服用した時間と認知機能の低下との時間的な関連性がある、せん妄のような症状がみられる、薬を中止したら認知機能の低下が改善する、などの症状がみられる場合があります。

薬の影響により認知機能が低下したと思われる場合は、速やかにかかりつけ医・主治医に相談しましょう。

高血圧や糖尿病も認知症の危険因子になるか?

認知症の危険因子として、高血圧、糖尿病、肥満、脂質異常症、喫煙、うつ病などがあります。

高血圧は、中年期に血圧のコントロールが不十分な状態が続いていた場合、脳の細やかな動脈が詰まり、脳血管障害につながる恐れがあります。

糖尿病は、血糖コントロールが不十分な場合や糖尿病歴が長い場合は、軽度認知障害(MCI)を発症するリスクが高くなり、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症の発症につながる恐れがあります。

また、生活習慣病による危険因子を減らすためには、食生活や日々の運動、禁煙など生活習慣を改善することが大切です。

認知症と生活習慣病の関係とは?

参考文献:1)今井幸充:認知症を進ませない生活と介護 法研,p.42~45,p.62~65,平成27年
2)朝田隆:まだ間に合う!今すぐ始める認知症世簿 講談社,p.16~17,2014
3)全国若年性認知症支援センター 若年性認知症とは(2019年12月12日アクセス)



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