栄養士がアドバイス! シニアの食事の課題に気軽に取り組める工夫
昨年12月27日に公開したコラムでご紹介した、日清オイリオグループ(株)による「シニア食事日記調査」の結果を見ると、多くの高齢者に栄養不足の危険度が高いことがわかりました。今回は低栄養の弊害を改めて紹介するとともに、調査で見えてきた事実を踏まえながら、日々の生活に気軽に取り入れられる解決方法を栄養士が解説します。
低栄養になるとどうなる?
高齢になると消化機能や嚥下機能が弱ったり、活動量が減って食欲や食事量が落ち、知らず知らずのうちに低栄養の状態になっていることがあります。原因はひとつではありませんが、高齢者の多くが低栄養状態のリスクがあることがわかっています。エネルギーやたんぱく質など身体を作ったり動かしたりする基礎的な栄養素が足りなくなると、運動能力や意欲の低下などが起こり、やがては寝たきりになる危険性もあります。以下のようなリスクを避けるためにも、十分な栄養を摂取することが重要です。
■筋力や骨の減少⇒運動能力が低下し、寝たきり、転倒による骨折などの危険度が増す、体重が減少する
■免疫力の低下⇒ 体調を崩しやすくなる、治るまでに時間がかかる、感染症の危険度が増す
■認知機能の低下⇒認知症になる危険度が増す
■皮膚の耐久性の低下⇒皮膚の炎症や床ずれなどが起きやすくなる
■血糖値の低下⇒ 意識障害、集中力や記憶力の低下、めまいなどの症状が起こる
調査で見えた生活の課題
調査の結果を見てみると、1日2食が常態となっていたり、飲み物やフルーツ、お菓子のみで1回の食事を済ませている方もいます。高齢になると活動量が少なくなることでお腹がすきにくく、食事量が低下することが考えられます。「さっぱりしたものが食べたい」「消化のよいもの」というコメントも見受けられ、消化機能の低下も原因のひとつと言えるでしょう。
健康的に食事を摂るためにも、無理のない範囲で活動量を増やす努力が大切です。例えばラジオ体操や散歩を日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。運動を行うと、食欲や食事量の増加につながるだけでなく、血流の改善、心肺機能の強化、腸の働きの向上、筋肉量の増加、骨を強くするほか、気分が良くなるなどの効果も期待できます。
また、1人で食事をする方は極端に栄養が足りていなかったり、食事を抜きがちであることがわかりました。そこで、バランスの良い食事習慣を身につけるために、まずは食事の記録をつけてはいかがでしょうか?便利なツールとして、毎日の食事を10の食品群でチェック・記録することができる無料のスマホアプリ「バランス日記」などがあります。
自分1人のためにバランスの良い食事を準備するのはなかなか大変という方には、お弁当の宅配サービスという選択肢があります。作るのが億劫な方は毎日でなくとも、高齢者向けにバランスのよい食事を届けるサービスの利用を検討してみてはいかがですか?
実践!日々の食事で簡単に取り組める栄養対策
しっかり栄養を摂るためには、バランスの良い食事を3食きちんと食べることが理想ですが、いきなり食事量や回数を増やすのは大きな負担です。昨年12月27日に公開したコラム『「シニア食事日記調査」で見えた課題と対策』でもご紹介したMCTオイルを普段の食事に追加することです。無味無臭のため、いつものメニューに混ぜても違和感もなく、手軽にエネルギー補給が可能です。摂取量は初めてご使用になる場合は、摂りすぎると下痢などを起こす場合がありますので、1日大さじ1杯(14g)を目安に、小さじ1杯(4.6g)程度から徐々に増やすようにしてください。
今日から簡単に取り組める工夫をご紹介します。
飲み物にプラス
野菜ジュースやスムージーなどにMCTオイルをプラスすれば、エネルギーとともに、ビタミンなどの栄養が摂れてお勧めです。1日の食事回数が少ない人でも、飲み物であれば間食として摂りやすいのではないでしょうか。また、たんぱく質やカルシウムの摂れる牛乳の入った飲み物を摂るのもよいですね。同じようにヨーグルトに混ぜて食べるのも、手軽で効果的です。
味噌汁にプラス
日々の食事に登場する頻度が高い味噌汁にMCTオイルを追加すれば、習慣的にエネルギーアップが図れます。今回の調査では塩分を摂りすぎる傾向も見られましたので、減塩味噌を使ったり、具だくさんにすることを心がけましょう。野菜やわかめなどには塩分を排出する成分が含まれていますので、お勧めの具材です。
ドレッシングにプラス
高齢者の食事指導をする中で、皆さんの食卓によくのぼっているのが生野菜のサラダという傾向がありました。サラダを食べる時には、ドレッシングにMCTオイルを追加してみてください。もちろん市販のドレッシングで構いません。
その他、認知症ねっとではMCTオイルを使ったお勧めレシピもご紹介しています。ぜひご覧ください。
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