認知症介護の注意点:③排泄を介助するとき
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失禁パンツ、紙パンツ、尿取りパッド、おむつの使い分けは?
失禁パンツは、尿漏れがある場合に使用します。吸収作用や消臭作用があり、吸収量によって種類が分かれています。洗濯して繰り返し使用できるので、経済的です。旅行や映画、観劇など長時間トイレに行けない場合に利用すれば安心です。高齢者や認知症の方だけでなく、尿漏れが気になる方も利用しやすいです。
紙パンツは、使い捨てのパンツ型であるため、トイレに行ってひとりで下ろすことができます。失禁パンツとおむつの中間型と言えます。消臭作用や通気性もあり、履いても違和感がないように改良されています。吸収量は、失禁パンツよりも多く、150~300cc程度のものもあります。日々の生活用と外出時用に使い分けを行っても良いでしょう。
尿取りパッドは、紙パンツやおむつの中に付けることで、排尿があっても、尿取りパッドだけ取り替えることができます。そのため、頻回のおむつ交換による負担や、コストを抑えることができます。
高齢者や認知症の方だけでなく、尿漏れが気になる方向けの尿取りパッドもあります。様々なバリエーションがありますので、ご自分に合わせたものを選びましょう。
おむつは、ベッド上で寝て過ごす時間が多い方、歩行が困難な方向けに使用される場合が多いです。丁字型のおむつにテープで固定します。横漏れが起きないような工夫をしていたり、通気性や消臭作用、吸収量も多く作られています。尿取りパッドと一緒に使うことで吸収量をさらに増やすことができます。
排泄物を流さないことがある。
トイレのボタンの数が多く排泄後に流す方法が分からない、ボタンの説明書きの文字が小さくて読めない、排泄物を流すという認識が薄れてしまうなどの原因が考えられます。どのボタンを押すのか目印をつけたり、自動で流れる便器を利用するという方法もあります。
トイレで排泄に集中しないことがある。
トイレの中に本や小物、カレンダーなどいろいろな物を置いていませんか。認知症の人は、他の物が気になってしまうと集中できない場合があります。トイレの中に置いてある物を片づけてみましょう。
トイレに行ったのに、失禁している。
トイレには行ったものの、失禁する場合があります。ズボンを下ろす前に間に合わなかった、ズボンの下し方が分からなかった、トイレの便座に座り方を忘れてしまう、などの理由があります。プライドを傷つけないように、どこまで介助をすればよいのか見極めながら声をかけて行いましょう。
また、身体を保つことが難しく、両手でズボンを下ろすことが難しくなっている場合もあります。トイレに手すりをつけたり、必要な部分だけに介助を行うことで、失禁を予防するだけでなく、自立にもつながります。
何度もトイレに行く。
誰でも排泄に関することは、プライベートな行為であり、「人の世話にはなりたくない」と思っています。しかし、尿失禁や頻尿など排泄に関する問題は更年期を迎えることから起こり始め、高齢者になると「年齢のせいだ」と考えて、旅行や楽しみを諦めてしまう人もいます。このように、排泄はプライベートな行為であると共に、生活の質を低下させます。例えば、過活動膀胱や膀胱炎、尿道炎などの場合、泌尿器科に受診して治療を受けることで症状が改善します。
しかし、加齢に伴う場合、膀胱に尿を貯めておくことができなくなり、尿失禁や頻尿となります。また、排尿したのに尿が残っている残尿感がある場合もあります。 一方で、男性は、前立腺肥大により尿が出にくくなる(排尿困難)場合があります。
認知症の人は、トイレに行ったことを忘れてしまい、数分後にトイレに行きたくなる場合や、過去に失禁をした経験から「失敗してはいけない」「迷惑をかけたくない」という思いが強く、頻回にトイレに行く場合があります。
特に、介護者が家族の場合、夜間にトイレを介助する際は、自分の睡眠サイクルと異なるタイミングで起きるため、介護者の健康にも影響が及びます。日中の水分摂取を促し、夕方以降は控えるなど工夫してみましょう。
トイレ以外の場所で排泄してしまう。
認知症によって、場所が分からなくなり、トイレを探していても見つからないため、違う場所で排泄してしまう、という場合もあります。また、失禁したことを隠そうと、汚れた下着を箪笥などに隠してしまう場合もあります。それを見つけた家族は叱るのではなく、認知症の人のプライドを尊重するように関わることが重要です。
例えば、排泄の間隔を観察し、そろそろ排泄の時間だな…という頃に、羞恥心に配慮し、その人だけに聞こえる声の大きさで、トイレに誘いましょう。「そろそろトイレに行ってみませんか。」「トイレに座ってみましょう。」など無理をしないように声をかけます。もし、断られた場合は、「食事の前にトイレに行って、すっきりしませんか。」「散歩の前にトイレに行きませんか。」など日々のスケジュールに合わせてタイミングを図るのも方法の一つです。
弄便(ろうべん)がみられる。
便失禁したおむつに手を当てたり、肛門に溜まっている便を出そうと手を当ててしまうことから、手に便がつき、その手であちこち触ってしまう場合があります。家族や介護者は、掃除だけでなく、精神的にも非常に落ち込みます。
しかし、認知症の人の行動には、何かしらの理由があります。便失禁した不快さからおむつに手を入れる場合や、腹筋が弱い、ベッド上で仰向けでは腹筋に力が入らずいきめないため、肛門で溜まっている硬くなった便を出したいことから触ってしまう、などの理由が考えられます。
おむつの中に便失禁したままの状態が続くと、皮膚が赤くなる、痛み、かゆみ、ただれなどの皮膚トラブルが起こり、感染への抵抗力が弱まります。特に、高齢者の場合は皮膚が弱く感染しやすい状態です。便失禁がみられたら、速やかにお尻を拭く、洗うなど清潔を保つことが大切です。
また、高齢者が便秘になりやすい理由として、運動量が少ないため腸の動きが鈍くなる、食事の量が減るため食物繊維の摂取が少ない、水分の摂取が少ないため便が硬くなる、などがあります。
自然な排便を促す援助として、日中に運動、散歩や車椅子で過ごすなどの活動量を増加したり、腹部マッサージを行う、食物繊維やヨーグルトをメニューに取り入れる、水分の摂取を促す、可能であれば便座に座ってもらい、排便時の姿勢を保つなどがあります。弄便をする理由を考えると共に、心地よい排便が行えるような援助を行いましょう。
失禁時の対応はどうしたら良いか。
認知症が進んだり、ひとりでトイレに行けなくなると、失禁する場面が多くなります。しかし、「失禁をしてしまった」「失敗してしまった」という羞恥心を抱きます。そのため、汚れた下着を隠す人もいらっしゃいます。
失禁したことや下着を隠すことを責めるのではなく、「気持ち悪かったですね。取り替えて気持ちよくなりましょう。」や「すっきりしましたね。お腹は痛くないですか。」などのお声かけを行い、羞恥心を和らげるようにしましょう。
また、失禁していても取り替えることを拒否する場合は、「お食事前だから、きれいにしましょう。」「散歩の前なので、トイレに行きませんか。」などイベントとつなげてタイミングを図る方法もあります。その際、トイレにお連れして、ウォッシュレットで洗ったり、トイレでおむつを交換する方法もあります。
「下の世話になってしまった」、「人としておしまいだ」と感じる方もいらっしゃいます。誰しもトイレで排泄をしたいと願っています。人として尊厳を守り、気持ちよく排泄が済ませられるように介助することが大切です。
トイレの場所が分からなくなった。
認知症によって、見当識障害がみられ、トイレの場所が分からなくなる場合があります。扉に『トイレ』『便所』と張り紙をしたり、電気をつけておく、扉を開けておくなどの方法があります。
排泄のタイミングをつかむ方法は?
排泄のタイミングをつかむためには、数日の排泄パターンを観察する必要があります。
排尿の場合、水分を摂る時間、何時間後ぐらいに排尿があるか、なんとなくソワソワ・モゾモゾしている、などその人なりのシグナルを把握します。
排便の場合、毎日排便があるのか、何日間隔なのか、食後なのか、排便を促す薬は服用しているのか、など排便のパターンを観察します。特に、排便を促す薬を使用した場合、下痢や便失禁を起こす場合がありますので、腹痛はないか、排ガスの状態など細やかな観察を行いましょう。
排泄のタイミングがつかめれば、そろそろかな?という予測のもとにお声かけをして促すことができます。
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