『もの忘れ外来』は、どんな外来なの?
「最近、もの忘れがひどくなった」「いつも何かしら探しているんだよね」「…認知症かも?」と感じた時、何科に受診をすればいいのでしょうか。最近、クリニックや医院、病院の看板やホームページに『もの忘れ外来』(その他に「認知症外来」や「メモリークリニック」など施設によって呼び方が異なります。)と標榜している施設があります。『もの忘れ外来』とは、どのような診察や診断、治療を行うのでしょうか。
今回は、『もの忘れ外来』についてご説明します。
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もの忘れ外来とは?
もの忘れには、加齢によるもの忘れと、認知症によるもの忘れの2種類があります。 加齢によるもの忘れは、忘れたことを自覚しており、ヒントがあると思い出せます。例えば、階段を昇り2階へ着いた時、「あれ?何をしに来たんだっけ?」と忘れることがありますが、もう一度1階に戻ってみると、「そうだ、洗濯物を取りに来たんだった。」と思い出す場合があります。一方、認知症によるもの忘れは、忘れたこと自体を忘れてしまい、ヒントがあっても思い出せません。例えば、ご飯を食べたこと自体が記憶から抜け落ちてしまうため、「ご飯まだ?」「さっき食べたでしょ。」というやり取りがみられます。
もの忘れ外来は、「認知症かも?」と感じた際に、認知症の専門医が診察・検査・診断・治療を行う施設です。
どのように受診をすればいいの?
皆さんは、「かかりつけ医」がいらっしゃいますでしょうか。健康診断や予防接種、風邪をひいた時に診察をしてもらうなど、何かあった時に診てもらう医師です。「もの忘れがひどくなった」「いつも何かしら探している」「認知症かも?」など認知症の症状が感じられた場合、まずは、かかりつけ医に相談をしましょう。
なぜなら、かかりつけ医は、今までの病気や既往歴、治療の経過を知っています。また、かかりつけ医は医師会や『もの忘れ外来』、認知症サポート医、認知症医療疾患センターなど認知症の専門施設と連携しています。このように、かかりつけ医から専門施設を紹介してもらう際、ご本人の今までの情報を紹介状に書いてもらうことができます。その結果、専門施設で認知症の診断をしてもらう場合、非常に有用な情報になります。
かかりつけ医がいらっしゃらない場合は、お住まいの地域を担当する地域包括支援センターに相談をしましょう。
かかりつけ医より『もの忘れ外来』など専門施設に紹介状を書いてもらい、予約をします。予約の取り方などは、かかりつけ医に確認をしましょう。もの忘れ外来は施設によって検査の種類や、受診に必要な日数など施設によって異なりますので、電話で確認をしましょう。例えば、1回目の初診は医師の問診、血液検査・レントゲン撮影・心電図・神経心理学的検査など、2回目はCTスキャンやMRI、脳の血流を調べるシンチグラム検査、脳波検査、など、3回目は今までの検査を行って、総合的な診断と、今後の治療方法の説明を行います。
認知症以外の病気の場合もある?
もの忘れ外来で、認知症に関する専門的な検査をしてもらった結果、「認知症ではない」と診断される場合があります。例えば、認知症に似ている症状がみられるうつ病や正常圧水頭症、甲状腺機能低下症などです。
このような病気の場合、専門病院で治療を受ければ、症状が回復する場合があります。そのため、「認知症かも?」と感じていても、なかなか受診する気がしないという方がいらっしゃいますが、早めに診察や検査、診断を受けることで適切な治療を受けることができます。
認知症だった場合、どうしたらいいの?
認知症と診断された場合、その後の治療方法として、薬物療法や非薬物療法(リハビリテーションや運動療法、音楽療法、回想法)などを受け、認知症の進行を緩やかにすることができる場合があります。また、ご本人やご家族の相談を受けてくれる施設もあります。
治療を受ける場所は、もの忘れ外来で継続する場合もありますし、専門医からかかりつけ医に診断の結果や治療方法を詳細に記載した報告書を送り、かかりつけ医にその治療を行ってもらうという場合もあります。
かかりつけ医であれば、今までの持病がある場合、治療と共に認知症の治療も一緒に受けることができます。また、近所であれば、風邪や何かあった場合に受診しやすいですし、薬の飲み合わせなどを確認しながら、すぐに対応してもらうことができます。そして、認知症の症状や持病が悪化した場合、専門施設に紹介をしてもらうことができます。
かかりつけ医と認知症のもの忘れ外来などの専門医は連携を図りながら、ご本人の最善の治療を行います。今まで受診に戸惑っていらっしゃった方も、まずはかかりつけ医に相談してみてはいかがでしょうか。
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