山口先生コラム「やさしい家族信託」第11回:Q&A 親の認知症が心配。「我が家にも家族信託が必要ですか?」

2019年9月11日

司法書士事務所ともえみ 代表司法書士 山口先生コラム「やさしい家族信託」

山口良里子先生

厚生労働省によれば、2025年には認知症患者が700万⼈になると⾔われています。認知症になると資産は凍結され、⾃分や家族のために財産を動かすことができなくなります。

本コラムでは、「職業後見人」として高齢者の方の財産を管理し、また、自身の両親の「家族信託受託者」としても活動する高齢者支援専門の司法書士である山口良里子先生が、認知症から⼤切な資産を守るために注⽬される「家族信託」についてわかりやすく解説します。


この記事の執筆
山口良里子先生
司法書士事務所ともえみ 代表司法書士
山口良里子先生
この記事の目次
  1. 【質問】我が家の場合、家族信託は必要でしょうか?
  2. 【答え】家族信託は必要そうです。3つのチェックポイント
  3. 【解説】高齢期の親のお金の管理に使える「家族信託」

【質問】我が家の場合、家族信託は必要でしょうか?

もうすぐ80代の親の認知症が心配で、「認知症ねっと」で情報を収集しはじめました。認知症になると、医療や介護の対策だけでなく、お金の管理や財産の処分の問題もでてくると分かりました。

「家族信託」という制度が、高齢期の親のお金の管理に使えるということも分かったのですが果たして、我が家のような状況で「家族信託」は、必要なのでしょうか?

【答え】家族信託は必要そうです。3つのチェックポイント

質問いただいたA子さんの場合、家族信託は必要でしょうか?

家族信託が必要かどうかのチェックポイントは、①家族の状況 ②財産の状況 ③希望 の3つです。

A子さんのご家族についてチェックしてみましょう。

チェックポイント 現状
①家族の状況について 父(78歳)年金暮らし。元気です
母(76歳)年金暮らし。元気です
A子さん(51歳)主婦。実家の近くに住んでいます。
弟(48歳) サラリーマン。弟の家族は近くに住んでいますが、
弟は関東に単身赴任中。
②財産の状況について ■お父さん名義の財産:
 ①実家 :父母が二人で住んでいます。
 ②空き家:父の弟が1人で住んでいましたが、昨年他界。
      父が引き継いでそのままです。
 ③預貯金:3000万円
■お母さん名義の財産:
 ①預貯金:100万円
③希望について お父さんの希望:自分たちの築いた財産で気楽に暮らしたい
お母さんの希望:お父さんが死んだ後が心配…
A子さんの希望:お父さんとお母さんの希望をかなえたい
弟さんの希望:自分は何もできないので、A子さんと自分妻に負担がかからないようにしてあげてほしい

【家族信託必要度チェック】

チェックポイント 問題点
①家族の状況について お父さんとお母さんの年齢が近い
→お父さんが他界時に、お母さんが認知症になっていると、相続手続きができない
②財産の状況について 資産のほとんどがお父さん名義
→お父さんが認知症になってしまうと、お金のやりくりできなくなる
③希望について 空き家不動産がある
→そろそろどうするか決めたいがなかなか決められない
→近所からクレームがきている。管理コストもばかにならない

家族信託しておくと、

①お父さんが認知症になっても、お父さんのお金は凍結せず、お父さんのために使える
②お父さんが他界しても、お父さんのお金は凍結せず、お母さんのために使える
③お父さん、お母さんの代わりに、子どもたちが空き家の管理処分を行える

以上より、A子さん家族は、家族信託しておいた方がよさそうです。

A子さんは、さっそくお父さんとお母さんに相談してみることにしました。ただ、「自分たちに家族信託ができるかどうか」は、まだよくわかりません。

次回は、「私にもできる?家族信託」について解説します。

【解説】高齢期の親のお金の管理に使える「家族信託」



「家族信託 」とは、親(委託者という)が、子どもなどの信頼できる家族・親族(受託者という)に、不動産や預貯金などの財産の管理を任せる契約のことで、「民事信託」ともいわれます。親(委託者)が決めた目的に沿って、子ども(受託者)が、信託された財産を管理・処分し、親(受益者という)のために使用します。

親が元気なうちから準備しておくことで、認知症で判断能力が低下しても、財産が凍結することなく親のために使うことができると、利用される方が増えています。

【家族信託しておくとできること】

①親が認知症になっても、親のお金は凍結せず、親のために使える
②親が他界した後のことも、決めておけるので相続手続きがスムーズ
③親の不動産の管理や処分を親の代わりに子どもたちが行うことができる

【我が家に家族信託が必要かチェックポイント】

①家族の状況について 親が他界した後に、心配な家族がいる
親が他界した後に、遺産分けの話合ができない人がいる
②財産の状況について 親の資産のほとんどが不動産だ
親が管理しきれていない資産がある
親が認知症になって凍結すると困る資産がある
③希望について 子どもに負担をかけたくない
親の安心な暮らしをサポートしてあげたい

一つでもチェックがついたら「家族信託」を検討の余地があります。


「家族信託」とは、一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。本コラムの著者は、一般社団法人家族信託普及協会の認定家族信託専門士です。
本コラムで紹介する事例は、フィクションです。実際に家族信託をご検討される場合は、専門家へご相談ください。

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