熊本大学、パーキンソン病などの病態機序を解明
G4を標的に神経変性を「未病」で防ぐ
熊本大学発生医学研究所の塩田倫史教授、矢吹悌准教授および松尾和哉助教らの研究グループは、シヌクレイノパチー(パーキンソン病、レビー小体型認知症を含む進行性の神経変性疾患の総称)の発症機序を新たに解明しました。
シヌクレイノパチーでは、「αシヌクレイン」と呼ばれるタンパク質が細胞内に凝集することで神経機能の障害を引き起こしますが、その凝集機序は不明でした。本研究グループは、RNA高次構造のひとつである「グアニン四重鎖(G4)」の集積がαシヌクレイン凝集の足場となることを発見しました。
パーキンソン病患者の剖検脳を解析したところ、αシヌクレイン凝集体の約90%にG4が集積していました。さらに、本研究グループが見出したG4の集積を抑制する薬剤である「5-アミノレブリン酸」(参考文献1)をシヌクレイノパチーモデルマウスに経口投与したところ、αシヌクレインの凝集が阻害され、進行性の運動機能の低下が予防できました。
研究結果のポイント
・パーキンソン病などのシヌクレイノパチーは、細胞内でのαシヌクレインの凝集により引き起こされますが、その凝集機序は不明でした。
・本研究グループは、αシヌクレインが「グアニン四重鎖(G4)」※の集積を足場として凝集することを明らかにしました。
・G4の集積を抑制する薬剤は、シヌクレイノパチーモデルマウスにおけるαシヌクレインの凝集を阻害し、進行性の運動機能の低下を予防しました。
・G4の集積は、遺伝性だけでなく孤発性の神経変性の原因にもなることから、「G4の集積抑制」が神経変性疾患の「未病」に向けた創薬に繋がります。
今後の展開
今回、αシヌクレインを細胞内で凝集する分子が「G4」であることを初めて同定し、「G4の集積抑制」によってシヌクレイノパチーの発症を予防できることを証明しました。これまで本研究グループは、遺伝性の神経変性疾患においてもG4の集積が神経変性を引き起こすことを報告しています(参考文献1)。また、アルツハイマー病に深く関わる「タウ」と呼ばれるタンパク質もG4により凝集することも明らかにしています(参考文献2)。すなわち、「G4の集積」を抑制することは、神経変性疾患全般の「未病」に向けた創薬に繋がります。
参考文献1:Asamitsu et al. Science Advances 7, eabd9440. (2021)
参考文献2:Yabuki et al. bioRχiv doi: https://doi.org/10.1101/2024.03.01.582861
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(画像はイメージです)
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